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​「あなたのさくら色 2021」
〈歌詞部門〉

2位 「糸口の向こう」

桑嶋 ミキト

  1. 手を伸ばしてつかもうとした
    指先をかすめて逃げ去っていった
    あれは何だ? 何を失った?
    追いかけていたものすら もう分からない

    仕方がないな 時代が悪かった
    諦めるしかないんだ ほら、受け入れるんだ
    誰が言った? 何を犠牲にした?
    憎むべき相手すら 同情してしまう

    糸口は目を凝らさないと見えないよって
    裁縫しながら、ばあちゃんは言ってた
    バラバラになった青春の切れ端を
    縫い合わせているようで フフフって

    気付きもしなかった 今まで
    縁側の前に植えてあった小さな小さな木
    桜が片隅で咲いていた 笑うように咲いていた
    笑われたのはボクたちだ
    目を凝らさないで下を向いていたボクたちだ
     

  2. 忘れかけていて思い出そうとした
    大切なフレーズが記憶から消えた
    あれは何だ? 本当に大切か?
    伝える言葉すら ままならない苦悩

    運が悪いな 昔は良かった
    息苦しい時代だ さあ 我慢するんだ
    何で言った? 言って得になった?
    慰める相手すら 敵になってしまう

    そういえば最近よくしゃべってくれるねって
    今日も縁側でばあちゃんは縫ってた
    その指の動きに桜はシンクロするように
    踊っているようで ラララって
    探そうともしなかった 未来など
    つなぎ合わせたい小さな小さな願い
    桜は未来を縫い合わせ 小さいけれど笑っていた
    笑われたのはボクたちだ
    そこに糸口があるのに目を凝らさなかったボクたちだ

     

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